2018年2月28日水曜日

スクーリング最終案内(注意事項有り)

2018年もあっという間に2ヶ月が過ぎ、言語文化学科のスクーリングまであと1週間を切りました。以下のタイムスケジュールをご覧ください。なお、スクーリング当日はキャンパス内の生協も学生食堂もお休みです。必ず各自で昼食を用意してきてください。

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日時:2018年3月3日(土)午前10時10分より
会場:泉キャンパス2号館224教室ほか

Ⅰ.10:10~10:50 学科長挨拶、学生の自己紹介

Ⅱ.11:00~11:50 〈課題2〉に関するセミナー part1
1.32A教室「ことばの分析」(岸浩介先生)
2.32B教室「考えること・表現すること」(文景楠先生)
3.32C教室「ことばの習得と教育」(渡部友子先生)
4.32I教室「ことばとコミュニケーション」(小林睦先生)
5.32J教室「日本語学と日本語教育」(佐藤真紀先生)

12:00~12:50 <昼食>

Ⅲ.13:00~14:55 学びのオープンキャンパス(4年生による卒業論文発表)
1.伊藤美穂「夢を売るテーマパークの裏側 ―東京ディズニーランドにおける労働問題」
2.渡辺肖「教科書からみる竹島に関する記述研究―昭和と平成を中心に―」
3.武中智穂「中学生にアルファベットの書き方を指導する方法」
4.長澤英里香「女性の美しさはどこにあるか」
5.齊藤ゆみ乃「ベトナム語母話者による日本発音協働学習の試み」

Ⅳ.15:10~16:00 〈課題2〉に関するセミナー part2
1.32A教室「文化のしくみ」(津上誠先生)
2.32B教室「日中韓の言語文化」(原貴子先生)
3.32C教室「英米の言語文化」(井上正子先生)
4.32J教室「独仏の言語文化」(宮本直規先生)

Ⅴ.16:10~ アンケート回収及び解散

※本を読んでその内容を的確にまとめることは、入学後の勉学の中で必要とされる重要なスキルです。課題(2)のPART1とPART2への取り組みの中で、その練習をしてください。

では、当日みなさんにお会いするのを楽しみにしています!

投稿日:2018年2月28日カテゴリー

2018年2月15日木曜日

 

スクーリング情報⑩【ことばの分析】課題図書紹介

【ことばの分析】課題図書紹介           担当:岸浩介先生

 私たちは普段から何気なく「ことば」を使って生活しています。この「何気なく使っている」という事実があるため、「ことば」の使用はいわば「当たり前のこと」として見過ごされがちですが、少し視点を変えて考えてみると様々な問いが浮かんできます。いくつか例を挙げてみましょう。



 例えば、私たちは、今まで一度も発したことのない文を発することができますし、今まで聞いたことの無い文であっても理解出来ます。これはいったいなぜなのでしょう。また、私たちは、子供の頃に日本語の文法規則を誰からも教わらずに育ったにも関わらず、自由に日本語を使いこなせています。なぜこのようなことが可能なのでしょう。確かに国語の授業やテレビ番組などで「こういうときにはこういう日本語を使う」という風に「正しい日本語の使い方」を部分的に教わる、あるいは知識として取り入れることはありますが、果たしてその知識だけでこのようなことは可能になるでしょうか。

 次に外国語について考えてみましょう。「英語の文を作るときは、こういう順番で単語を並べる」とか「この形容詞はこの名詞を修飾できない」ということは習うことがありますが、「『なぜ』そうなっているか」についてはどうでしょう。「英語の文法にそういう規則があるからだ」という説明を受けることがあったかもしれませんが、ではその「英語の文法」に「なぜ」そのような規則があるのでしょう。また、英語と日本語では多くの相違点が見られると言われますが、共通点は本当に存在しないのでしょうか。

 上で述べたような問いに解答を試みるのが言語学の目標です。もちろんここでの問いは、わたしたちの「ことば」について問題にされることのほんの一部であり、様々な問題が「ことばの研究」の考察対象になりえます。これも「ことば」ということば自体がとても広い意味を持っており、各国の文化研究や外国語習得論、さらには脳科学といった様々な領域と密接に関連しているからです。スクーリングの課題図書として挙げた2冊は、この「ことばの研究」という極めて幅広い学問領域に最初の一歩を踏み出すための良いきっかけとなります。これらの本を出発点にして「ことば」に対する理解を深めれば、言語文化学科でのより深い学びにつながるでしょう。

投稿日:2018年2月15日カテゴリー

2018年2月9日金曜日

 

スクーリング情報⑨【日中韓の言語文化】課題図書紹介

【日中韓の言語文化】課題図書紹介       担当:原貴子先生

1.石川九楊『日本の文字―「無声の思考」の封印を解く』(2013年、筑摩書房)


 著者は、日本語の特徴は、漢字、ひらがな、カタカナの三種類の文字を使用することであると捉えています。それはすなわち、日本語には、三種類の文体があることを意味すると述べています。そして、この三種類の文字・文体を用いることが、日本文化にどのような影響を及ぼしているか、という問題意識で本書は描かれています。
 とすると、著者の主張を理解するために、まずは、著者が、漢字、ひらがな、カタカナをどういうものと捉えているか、をおさえる必要があります。つぎに、漢字、ひらがな、カタカナが用いられた文体が、それぞれどのような表現領域で用いられると著者は考えているのか、を確認していきましょう。ちなみに、書名に「無声」というあまり聞き慣れないことばが見られますが、このキーワードは、漢字の特性と関わりがあります。
 日本語における三種類の文字・文体について取り上げる際に、著者は、西洋由来の言語学(例えば、「文字は表意文字から表音文字へと発達した」とする見解など)をそのまま適用することや、それ以外の通説(例えば、「漢字は、形、音、義をもつ」とする見解など)を鵜のみにすることを批判します。また、東アジアの漢字を用いる文化に言及する際も、アルファベットを用いる文化と対比させていきます。ですので、著者の見解を理解する前段階として、反論・比較の対象とされているものも併せて確認し、双方の相違点を明確にしましょう。その際に、著者の用いる語の定義は何か、を意識してみると整理しやすくなると思われます。
 著者の見解の一部を紹介しておきます。例えば、これまでもひらがな表記を用いたことによって和歌において掛詞が盛んになったということが指摘されてきましたが、著者は、それは「ひらがなの本質から生じてきた一種の字韻」であるなどとより積極的に捉え直します。あるいは、現在流通している「文字」という概念のあり方に疑念を有する著者は、「誰も文字なんて書いてはいない」「決して漢字やひらがなやアルファベットが文字であるということにはならない」と主張します。
 こうした独自性のある興味深い見解が展開されていきます。本書を通じて、何気なく捉えていた「文字」について改めて考えたり、漢字、ひらがな、カタカナを有する日本語の豊かさなどが感じられたりすると思われます。

2.倉本一宏『戦争の日本古代史 好太王碑、白村江から刀伊の入寇まで』(2017年、講談社)





  本書は、倭国および日本が、北東アジアの国々との間にどのような戦争を行い、また、諸外国の侵攻にどのような対応を示したか、を追究したものです。それを通じて、北東アジア諸国が日本をどう見ているかを理解し、さらには、そうした眼差しが成立した歴史的背景を把握することが目的になっていると捉えられます。
 なぜ戦争に焦点化して北東アジアにおける古代史を振り返るのか、について、著者には、明確な考えがあります。それは、「近代日本のアジア侵略は、その淵源が古代以来の倭国や日本にあった」と考えていることです。著者が「近代日本のアジア侵略」の「淵源」と見なしたものは、具体的にはどのようなものでしょうか。著者によれば、日本において形成されてきた「小帝国志向」「東夷の小帝国」、ならびに、朝鮮半島諸国、とりわけ「新羅に対する敵国視」が該当するということです。この二種がどのようなものかを理解することが、重要になってきます。
 さて、本書は、四~五世紀の対高句麗戦から十一世紀の刀伊の入寇までを時系列で扱い、さらには近代における戦争を考えるために、十三世紀の蒙古襲来と十六世紀の文禄・慶長の役が追加されています。
 このような流れがわかりやすく整理されています。しかし、それにもまして魅力的なのは、多くの先行研究を踏まえた上で著者の見解が示されていることです。問題にされていることに対する先行研究の見解と著者のそれがどう重なり異なるのか、についても意識してみましょう。また、それぞれの見解を支える根拠は何か、についても考えてみるとより深まるかもしれません。
 その他には、著者の歴史を扱う手つきにも注目してみてください。例えば、著者は『日本書紀』の記述に対して、「このような都合のいい筋書きが、はたして史実と考えられるであろうか」と疑問を呈します。ここから、「史実」とは何か、歴史として叙述されるとはどういうことか、という問題が浮上します。
 本書を通じて、現代にも繋がるものとしての古代における北東アジア諸国との関係性を知ることができ、さらに、歴史における事実とはどういうものか、といった問題意識なども学ぶことができると思われます。

投稿日:2018年2月9日カテゴリー

2018年2月5日月曜日

 

スクーリング情報⑧【日本語学と日本語教育】課題図書紹介

【日本語と日本語教育】課題図書紹介         担当:佐藤真紀先生

 日本で生まれ育ち、子どものときから日本語を母語として育ってきた人にとって、「日本語」は当たり前のものですね。苦労して学んだ経験もありませんし、普段話すときに日本語の文法や表現を意識することもあまりないでしょう。
 では、日本語が正しく使える日本人ならば、誰でも日本語を教えられるのでしょうか。答えは”No”です。日本語が使えることと、日本語を「外国語として」外国人に教えるということは、全く別ものなのです。



 日本語を学ぶとき、どこがどう難しいのでしょうか。日本語にはどのような特徴があって、それをどう伝えればいいのでしょうか。普段あまり意識して言葉を使っていないので、改めて聞かれると答えられないことが多いです。例えば「『おいしそうだ』と『おいしいそうだ』はどう違いますか?」と聞かれたら、戸惑いませんか。この2つは意味が大きく違うので、比べること自体に違和感があります。でも形を見れば「い」があるかないかの違いしかありません。似ていると思うのも当然でしょう。
 今回取り上げる本は、どちらも荒川洋平さんという方が書いた本です。著者自身、日本語教員であり、その実体験をもとに、日本語とはどういうものか、日本語を教えるとはどういうことか、日本語教員を目指す人が知っておくべきこと等が書かれています。
 日本語そのものに関心がある人は『日本語という外国語』から、日本語教育の様子が知りたい人は『もしも・・・あなたが外国人に「日本語を教える」としたら』から、読んでみるといいでしょう。どちらも、日本語教員という仕事の難しさ、面白さ、楽しさを味わうことができます。
 日本語教員には、学習者の視点に立って日本語を見ることが重要になってきます。この本を読んで、その第一歩を踏み出してください。

投稿日:2018年2月5日カテゴリー