2017年1月30日月曜日

 

スクーリング情報(11)【表現と文化】

【課題図書紹介】― 表現と文化 ―      担当:山崎冬太先生

 言語文化学科では、言語に関わる文化のほかに、映像に関わる文化の研究もできます。具体的にいえば、映画論、演劇論、写真論、広告論などです。

 現代生活において、ことばだけに頼らないコミュニケーションの比重は高まるばかりです。多様化するメディア上にあふれている映像をいかに読み解くか、掘り下げて考察してみませんか。たとえば、写真について考えてみましょう。読んで字のごとく「真」を「写す」ものと思われがちな写真。真実を伝えるものだからこそ、写真は新聞やテレビの報道になくてはならないものですし、日常生活においても、写真は個人的な思い出を正確に保存するために利用されています。

 しかし、写真はさまざまに加工することができます。芸術的な表現の手段としても使われますし、広告や政治的プロパガンダにおいては、大衆の意識や行動を操作する目的でも使われうるのです。その影響力が大きいだけに、写真とどのようにつきあっていくべきかは、広く深く考察するに値するテーマです。関心のある人は、ぜひ今橋映子『フォト・リテラシー』(中公新書)を読んでみてください。





 次は、四方田犬彦『日本映画110年』(集英社新書)の紹介です。
 映画が1885年にフランスで発明されてから、すでに130年以上経っています。その間めまぐるしい科学技術と表現技法の進化を経て現在の映画芸術があります。日本映画の歴史もそれ相応の歴史を持っています。さまざまなメディアで動画を目にしない日はありませんが、すべてが1世紀ちょっとの歴史の中で展開してきた多様な方法論の結実なのです。大学生として映画を考察するというとき、動く映像の歴史的軌跡を念頭におくことはきわめて有効です。初期の無声映画から近年のCG映像やアニメまで、本書で日本映画の歴史を垣間見ることは、映像をより意識的に見るためのきっかけになるはずです。とりわけ日本映画の全盛期を築いた溝口健二、小津安二郎、成瀬巳喜男、黒澤明たちの遺産が、宮崎駿らのジブリ作品や、北野武監督、是枝裕和監督たちにどのように受け継がれているかを考えてみましょう。

投稿日:2017年1月30日カテゴリー

 

【言語と教育】卒業論文発表会

1月12日(木)は卒業論文の締め切りで、いよいよ卒業論文発表会のシーズンに入りました。今日は、渡部友子先生・坂内昌徳先生・佐藤真紀先生ご指導の「言語と教育」チームにお邪魔しました。



発表者及び題名は以下の通りです。

渡辺直人   モダリティ「のだ」の出現位置
喜藤睦実   談話標識「なんか」の機能と場面に関する考察
渡邊奈央   絵本における役割語の特徴
田中美綺   新造オノマトペの特徴:料理漫画を題材に
早坂拓也   ポライトネス理論の概観
佐佐愛美   Twitterで見られる現代の若者語の考察
大江萌子   日本語の授受表現は英語と韓国語にどう翻訳されるのか
千葉絵里子 継続アスペクト比較:日本語母語話者の英語・韓国語習得の観点から
畠山彩子   なぜ日本人英語学習者は主語脱落文に気づかないのか
阿部加奈   留学生サポーターはどのように留学生の日本語誤用訂正をするのか
松森奈津美 一般科目における留学生の講義理解ストラテジー
半澤芙依悠 多文化共生を目指す地域日本語教室に参加するメンバーの認識
堀江美波   韓国人留学生の対日イメージの形成
菅原葵   ALTの地域社会におけるネットワーク形成
木村沙織   インドネシア人技能実習生の実態-インタビューによる事例から―
小野寺智洋 日本に住む国際結婚家庭における親としての生き方

投稿日:2017年1月30日カテゴリー

2017年1月26日木曜日

 

スクーリング情報(10)【独仏の言語文化】

【 課題図書紹介】 ― 独仏の言語文化 ―       担当:宮本直規先生

 フランス文化の紹介は、文学、絵画、音楽,映画などの芸術を題材として無数の書物が書かれてきましたし、また食文化やファッション関係の解説書も数多く存在します。しかし、それ以外の関心を持って留学した人が、実際にフランスに住んでみて感じたギャップやカルチャーショックを正直に記した本は意外に少ないのではないでしょうか。

 本書は、フランスの社会経済史を専門とする若い研究者がフランスに長期滞在したときに感じた、日常生活の疑問を率直に語り、その答えを探る内容になっています。いわば、日本の一般市民の視点を保ちながらのフランス体験記であり、知ったかぶりや無条件のフランス礼賛とは無縁です。

 一読すれば、頑固なフランス人気質が、グローバル化の波の中でどのような軋轢を引き起こしているのか、よくわかりますし、日本の社会と比較することによって、フランスの現状だけではなく、日本社会の常識を考える視点も与えてくれます。


 つづいて、ドイツの言語文化にまつわる課題図書です。

 第二外国語としてドイツ語を選択した1年生に、最初の授業で、なんでドイツ語を選んだの?と聞くと、「なんとなくドイツの言葉や文化に憧れて」というのが少なくありません。そうしたあなたのドイツに対する漠然とした憧れに、具体的な輪郭を与えてくれるのが、熊谷徹『びっくり先進国ドイツ』(新潮文庫)です。

 著者の熊谷さんはフリーのジャーナリストで、ドイツに住んで20数年。ひと言でいえば、長年の現地生活で培われたドイツ人観を、ポジもネガも取り混ぜて記した書物ということになります。節度を保った分かり易い文体と、経験に裏打ちされた具体的な記述内容ゆえに、皆さんでもとても楽しく、あっという間に読み終えてしまうでしょう。そこからは、実際には「先進」か「後進」かはよくわからない、しかしとりあえず私たち日本人には「びっくり」な現代のドイツ人の「生態」が浮かび上がってくることになります。

 しかし注意してほしいのは、こうした現代ドイツ人のどんな「生態」一つを取っても、それが過去の膨大な時間の積み重ねと因果の必然の上に成り立っているということ。たんに事象の上っ面を捉えるのみならず、その背後に隠れた過去の時間にも思いを馳せてみてください。

「憧れとは認識不足の産物である 」と言ったのは、トーマス・マンでした。

 有り体にいえば、あなたが誰かさんに憧れるのは、あなたが誰かさんのことをよく知らないからであって、あなたが誰かさんのことをよく知っていれば、そもそも憧れたりなんかしないのよ、という身もふたもない話です。

 スクーリング情報でご紹介した書物が、皆さんにとって幻滅の種ではなく、更なる興味関心の惹起に、ひいては対象へのより深い愛着に繋がっていくことを祈っております。

投稿日:2017年1月26日カテゴリー

2017年1月23日月曜日

 

スクーリング情報(9)【英米の言語文化】

【 課題図書紹介】 ― 英米の言語文化 ―       担当:秋葉勉 先生

 「英米の言語文化」のジャンルでは、イギリスとアメリカに関係する文化、文学、歴史、思想、政治、経済など様々なことを学ぶことができます。関連する科目として、「英米文学史(2年次)」、「英米の言語文化(2年次)」、「英米文学(3年次)」、「原典講読(3年次)」、「言語文化学演習(3年次)」、「総合研究(4年次)」が用意されています。ことばとしての英語の言語表現と機能を学び、それと同時にことばの背後にある意味をさまざまな視点から分析・研究することによって、英米の言語文化のもつ特質を学ぶことができます。

 次に推薦図書について簡単に紹介します。

 
 (1)池上彰著『そうだったのか!アメリカ』(集英社) は、よくあるアメリカの紹介本とは違い、池上氏が現代のアメリカが抱える問題を分かりやすく解説しています。9章で構成されていて、アメリカの「宗教」、「連合国家」、「帝国主義」、「銃」、「裁判」、「移民」、「差別」、「経済」、「メディア」について、豊富な資料をもとに多角的な視点から解説されています。読んだあとに読者が「そうだったのか!」と驚かされ、アメリカを十分に理解できる内容になっています。

 もう一つの書物は、(2)『「イギリス社会」入門―日本人に伝えたい本当の英国』(NHK出版新書) です。著者はコリン・ジョイスという英国人ですが、大学卒業後に日本とアメリカに18年以上も滞在した経験を持っているため、自分の国の文化―例えば、お酒やパブ、コーヒー文化、歴史、イギリス英語とアメリカ英語の違いなどを、日本やアメリカの文化と比較しながら客観的に説明しています。ただ単に自国の文化の優れた点を強調している他の書物と違い、ユーモアを交えてイギリスの良いところも悪いところも均等に説明している入門書です。

 (1)と(2)の書物は、本学の言語文化学科で他国の言語と文化を学ぶ方法のヒントを与えてくれる非常に役立つものです。

投稿日:2017年1月23日カテゴリー

2017年1月19日木曜日

 

スクーリング情報(8)【文化のしくみ】

【課題図書紹介】 -文化のしくみ-         担当:津上誠 先生

 「文化」とは、各社会の人々が共有するものの見方や考え方のことを言います。「文化のしくみ」では、芸術や思想のように高尚なものから、家族とか衣食住、恋愛、占いのように、そこら辺に転がっていそうなものまで、さまざまな事柄を「文化」の現れとしてとらえ、考察します。

 「文化のしくみ」研究には、「異文化理解を通じて自分の文化に気づく」という基本姿勢があります。 『イスラームの日常世界』 を選んだのは先ずそのことをわかっていただくためです。イスラム教徒は、1日5回祈るとか、女がベールを被るとか、断食月があるとかいった、不思議な習俗を実践します。この本はそれらを具体的に紹介しながら、実は彼らには私達にはない「すごいところ」があるのだということを、次第に気づかせてくれます。


 もしあなたの身近に、いつもあなたを気にかけてくれ、何もかも与えてくれ、賢い生き方を教えてくれる人がいたら、あなたはその人に喜んで従いたくなるはずです。イスラム教徒にとっての神とはそういう存在です。彼らの「すごいところ」とは、そういう存在を信じられるということです。個々の習俗は苦行ではなく神が教えてくれた理にかなった行為としてとらえられます。日々の生活は神と共にあり、意味に満ちあふれています。

 この本を読んでいくうちにあなたは、「すごいところ」を持たず何もかも自己決定せねばならない私たちの方がむしろ苦しい生き方をしているのではないかと思えてくるかもしれません。このときあなたは自文化についてひとつの気づきを果たしたことになります。

 さて、もう一つの本には 『在日韓国・朝鮮人』 を選びました。それは、差別といったリアルな社会問題に直面したときにも「文化」を考えることになるのだということに、ぜひ気づいていただきたかったからです。

 この本では、「在日」の人々が、自分が差別的状況の中にあると少しでも自覚してしまった場合、色々な「生存戦略」を採ることが紹介されています。自分が「在日」であることを隠し、普通の「日本人」として通そうとする人がいますし、そもそも自分は「在日」ではなく祖国(北朝鮮や韓国)の人間なのだと位置づける人もいます。他方、自分が「在日」であることを隠したり否定したりしない人もいますが、そういう人々にも、自分は何よりも「在日」なのだと言って「在日」というカテゴリーをありのままに肯定させようとする人がいれば、自分は確かに「在日」だが、そもそも私が何人(なにじん)であるかは(例えば私が音楽家であるということに比べれば)さして重要なことではないと言う人もいます。

 しかし、この本をじっくり読んでいくうちにあなたは、「在日」の抱える問題の根っこには、「日本人」自身が知らず知らずにとってしまいがちな「民族」についての思い込みがあることに、気づいていくと思います。それは、人々を「韓国朝鮮人」か「日本人」かのどちらかに分けたがり、どちらとも言えない曖昧な存在は許さないという、「日本人」自身がとりがちな分類法です。差別といった生々しい問題にも、「文化」すなわち社会の人々が共有するものの見方・考え方が、根底に横たわっているということです。

投稿日:2017年1月19日カテゴリー

2017年1月13日金曜日

 

スクーリング情報(7)                        課題図書紹介【ことばの分析】

【ことばの分析】課題図書紹介           担当:岸浩介先生

私たちは普段から何気なく「ことば」を使って生活しています。この「何気なく使っている」という事実があるため、「ことば」の使用はいわば「当たり前のこと」として見過ごされがちですが、少し視点を変えて考えてみると様々な問いが浮かんできます。いくつか例を挙げてみましょう。


例えば、私たちは、今まで一度も発したことのない文を発することができますし、今まで聞いたことの無い文であっても理解出来ます。これはいったいなぜなのでしょう。皆さんもこれまでの生活の中で「こういうときにはこういう日本語を使う」という風に「正しい日本語の使い方」を部分的に教わった、あるいは知識として取り入れたことはあるはずですが、果たしてその知識だけでこのようなことは可能になるでしょうか。

次に外国語について考えてみましょう。「英語の文を作るときは、こういう順番で単語を並べる」とか「この形容詞はこの名詞を修飾できない」ということは習うことがありますが、「『なぜ』そうなっているか」についてはどうでしょう。「英語の文法にそういう規則があるからだ」という説明を受けることがあったかもしれませんが、ではその「英語の文法」に「なぜ」そのような規則があるのでしょう。また、英語と日本語では多くの相違点が見られると言われますが、共通点は本当に存在しないのでしょうか。

上で述べたような問いに解答を試みるのが言語学の目標です。もちろんここでの問いは、わたしたちの「ことば」について問題にされることのほんの一部であり、様々な問題が「ことばの研究」の考察対象になりえます。これも「ことば」ということば自体がとても広い意味を持っており、各国の文化研究や外国語習得論、さらには脳科学といった様々な領域と密接に関連しているからです。スクーリング課題図書として挙げた2冊は、この「ことばの研究」という極めて幅広い学問領域に最初の一歩を踏み出すための良いきっかけとなります。これらの本を出発点にして「ことば」に対する理解を深めれば、言語文化学科でのより深い学びにつながるでしょう。

投稿日:2017年1月13日カテゴリー

2017年1月11日水曜日

 

後期
授業がスタート、そして…

昨日までの静寂さとは打って変わり、今日のキャンパスは活気に溢れています。2016年度もいよいよ最終コーナー、後期の授業がスタートしました。

図書館には試験の準備に勤しむ学生さんの姿が増えはじめています。そして、1号館1階学務係の一角にも、不安そうでいて満足げな表情を浮かべた学生さんがチラリホラリ。

そう、今日と明日(11・12日)が卒業論文の提出期間です。両日とも16時が締切なので、くれぐれもお気をつけあれ。

投稿日:2017年1月11日カテゴリー

2017年1月10日火曜日

 

スクーリング情報(6)           課題図書紹介【日本語学と日本語教育】

【日本語と日本語教育】課題図書紹介         担当:佐藤真紀先生

日本で生まれ育ち、子どものときから日本語を母語として育ってきた人にとって、「日本語」は当たり前のものですね。苦労して学んだ経験もありませんし、普段話すときに日本語の文法や表現を意識することもあまりないでしょう。
では、日本語が正しく使える日本人ならば、誰でも日本語を教えられるのでしょうか。答えは”No”です。日本語が使えることと、日本語を「外国語として」外国人に教えるということは、全く別ものなのです。


 日本語を学ぶとき、どこがどう難しいのでしょうか。日本語にはどのような特徴があって、それをどう伝えればいいのでしょうか。普段あまり意識して言葉を使っていないので、改めて聞かれると答えられないことが多いです。例えば「『おいしそうだ』と『おいしいそうだ』はどう違いますか?」と聞かれたら、戸惑いませんか。この2つは意味が大きく違うので、比べること自体に違和感があります。でも形を見れば「い」があるかないかの違いしかありません。似ていると思うのも当然でしょう。
 今回取り上げる本は、どちらも荒川洋平さんという方が書いた本です。著者自身、日本語教員であり、その実体験をもとに、日本語とはどういうものか、日本語を教えるとはどういうことか、日本語教員を目指す人が知っておくべきこと等が書かれています。
 日本語そのものに関心がある人は『日本語という外国語』から、日本語教育の様子が知りたい人は『もしも・・・あなたが外国人に「日本語を教える」としたら』から、読んでみるといいでしょう。どちらも、日本語教員という仕事の難しさ、面白さ、楽しさを味わうことができます。
 日本語教員には、学習者の視点に立って日本語を見ることが重要になってきます。この本を読んで、その第一歩を踏み出してください。
投稿日:2017年1月10日カテゴリー

2017年1月3日火曜日

 

スクーリング情報(5)                        課題図書紹介【日中韓の言語文化】

担当:松谷基和先生

①原田敬一『日清・日露戦争』(岩波書店、2007年)

 皆さんは「日清戦争」「日露戦争」と聞いてどのような戦争を連想するでしょうか?おそらく、中学校や高校の歴史関係の授業で、名前ぐらいは聞いたことのある人は多いでしょう。しかし、これらの戦争が二十一世紀の日本に生きる皆さんとどのような繋がりがあるのかという問いについて考えたことのある人は決して多くないと思います。

 この本を皆さんに読んでもらう際に考えて欲しいのが、まさにこの問いです。これらの二つの戦争は、当時から100年以上も過ぎた現代の日本にも大きな影響をあたえ続けています。とりわけ、日本と周辺諸国(中国、韓国、台湾、ロシアなど)との関係は、この戦争とその結果によって決定され、今日でも解決できない様々の国際間の問題の遠因となっています。

 「温故知新」という言葉にある通り、100年以上も前の戦争について知ることが、現代の日本という国と周辺諸国の関係を理解する上で、実は非常に大きな助けになります。薄い本の割には中身が濃く、予備知識がないと理解が難しい箇所も多々あります。皆さんは、少なくとも第三章、第四章、第六章、第七章と「おわりに」を読み、その中で初めて知って驚いたこと、また現代の日本と周辺諸国の関係を理解する上で参考になったことを中心に考えをまとめてきてください。





②中島岳志『中村屋のボース――インド独立運動と近代日本のアジア主義 (白水Uブックス) 』(白水社、2012年)

 この本は、日清・日露戦争を経て、日本が西洋列強と並んで世界の大国にとなりつつあった時代に、インドから日本に亡命してきたラース・ビハーリー・ボースという人物の人生を中心に、日本とアジアの関係史をドキュメンタリー風に描いています。

 この時代、インドは大英帝国による植民地支配下にあり、インド人であるボースは英国の支配に抵抗し、インド独立を目指して戦っていた闘士でした。このため、彼は英国政府から睨まれ、日本に亡命せざるを得ませんでした。

 当時の日本は大英帝国がインドを支配していたように、台湾や朝鮮を植民地として支配する「帝国」であり、隣国のアジア諸国ではなく、西洋列強と連携する姿勢が顕著でした。しかし、当時の日本の民間人の中には、アジア人同士が連携して西洋の植民地支配に対抗すべきと考え、英国支配に抵抗するインド人のボースを援助する人々もいました。こうした日本とアジアの関係を深め、連帯しようとした人々を一般的に「アジア主義者」と呼びます。

 今日でもアジア諸国との連携を深め、アジアに共同体を作るべきというような構想が語られることがあります。実はこうした発想は100年以上も前から存在しますし、実際にその構想の実現を目指して実際に行動したアジア主義者がいたのです。しかし、彼らの夢がなぜ失敗し、また今日に至るまでも実現しないのか、その根本要因はどこにあるのかについて、皆さんそれぞれが本書を読みながら考えてきて下さい。

投稿日:2017年1月3日カテゴリー