2018年1月26日金曜日

 

スクーリング情報⑦【独仏の言語文化】課題図書紹介

【ことばとコミュニケーション】課題図書紹介     担当:宮本直規 先生

 フランス文化の紹介は、文学、絵画、音楽,映画などの芸術を題材として無数の書物が書かれてきましたし、また食文化やファッション関係の解説書も数多く存在します。しかし、それ以外の関心を持って留学した人が、実際にフランスに住んでみて感じたギャップやカルチャーショックを正直に記した本は意外に少ないのではないでしょうか。
 本書は、フランスの社会経済史を専門とする若い研究者がフランスに長期滞在したときに感じた、日常生活の疑問を率直に語り、その答えを探る内容になっています。いわば、日本の一般市民の視点を保ちながらのフランス体験記であり、知ったかぶりや無条件のフランス礼賛とは無縁です。
 一読すれば、頑固なフランス人気質が、グローバル化の波の中でどのような軋轢を引き起こしているのか、よくわかりますし、日本の社会と比較することによって、フランスの現状だけではなく、日本社会の常識を考える視点も与えてくれます。





 一方、「ドイツの言語文化」の課題図書は、『知ってほしい国ドイツ』(新野、飯田、梅田編著、高文研、2017、1700円)という本です。ドイツの文化や歴史について、入門者にも分かりやすく解説した本は現在数多く出版されていますが、この本もそうしたものの一つです。
 ドイツのペット事情やビールへのこだわりといった「ドイツ文化あるある!」的な記述でスタートし、第2次世界大戦を境としたその前後のドイツ文化の点描が続き、ヒトラーとナチズムについての章を経て、難民問題、脱原発、EUとの関係といった極めて現代的なテーマによって締めくくられます。特に第2次世界大戦前夜からヒトラー、ナチス、東西ドイツ、ドイツの再統一という近現代史の流れは、言語文化を志す皆さんには是非とも読んでおいてもらいたい部分です。
 「知ってほしい」というタイトルが示すとおり、ドイツのことを「知りたい」と思っているみなさんには格好の入門書であることは確かなのですが、個々の部分では入門書の枠を超えた、突っ込んだ記述になっていることもまた事実です。しかし巻末には時代毎のドイツの地図や簡単な年表もついていますし、その気になればネットやスマホを駆使して未知の概念を調べながら読み進むことも可能なはずです。今のうちに、ぜひそうした読書のあり方にもチャレンジしてみて下さい。

投稿日:2018年1月26日カテゴリー

2018年1月23日火曜日

 

スクーリング情報⑥【ことばとコミュニケーション】課題図書紹介

【ことばとコミュニケーション】課題図書紹介     担当:小林 睦 先生

「ことばとコミュニケーション」に関する書籍として私がみなさんに推薦したのは、以下の2冊です。(1)平田オリザ『わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か』(講談社現代新書、799円)、(2)子安増生『心の理論 心を読む心の科学』(岩波科学ライブラリー、1512円)



(1)は「青年団」という劇団を主宰する劇作家・演出家の本です。著者の平田オリザ氏が書いた台本は、中学国語の教材にもなっているので、皆さんも接したことがあるかもしれません。この本には、その彼が、色々な小学校や中学校で演劇ワークショップを行なうなかで、気づいたことや考えたことが記してあります。具体的に言えば、本書には、コミュニケーション能力を過剰なまでに求める、現代社会の風潮に対する疑問が示されています。日本のコミュニケーション教育では「わかりあう」ことに重点がおかれているが、むしろ「わかりあえない」ところから出発するコミュニケーションが大事なのではないか。もし「心からわかりあえなければコミュニケーションではない」とするなら、そこでは、心からわかりあう可能性のない人を排除する論理が働くのではないか。しかし、実際には「心からわかりあえないんだよ、すぐには」、「心からわかりあえないんだよ、初めからは」と筆者は述べます。簡単に「わかりあう」ことを前提としない。その点で、本書は、コミュニケーション能力の必要性を説くばかりの多くの書物とは異なる視点から、私たちが考えるための示唆を与えてくれる書物です。

(2)は、他人の心を理解する仕組みについて、認知科学的な観点から書かれた著作です。議論の素材となるのは、自閉症児の研究が明らかにした様々な事柄です。自閉症は発達障害の一つであり、かつて主張されたように、子供本人の努力不足や母親の育て方などが原因で生じるものではありません。今日では、自閉症は脳の中枢神経の機能障害により生じると推定されていますが、詳しい原因はまだわかっていません。自閉症の特徴は、(a)他人の気持ちを理解することが苦手である、(b)ことばの発達が遅く、身振りや表情を使うのが得意でない、(c)同じ動作を反復して行なうことを好み、新しいことをやりたがない、といったものです。こうした特徴をまとめるならば、自閉症の人は、言語的あるいは非言語的なコミュニケーションに問題がある、と言うことができます。これらの研究から明らかになってきたことは、他人の気持ちを理解するためにはどのような心の働きが必要か、ということです。コミュニケーションが苦手であるのはなぜなのか。その仕組みを明らかにすることで、本書は、コミュニケーションの意味について、新たな側面から光をあてた書物だと言えるでしょう。

投稿日:2018年1月23日カテゴリー

2018年1月16日火曜日

 

スクーリング情報⑤【英米の言語文化】課題図書紹介

【 課題図書紹介】 ― 英米の言語文化 ―      担当:井上正子 先生

「英米の言語文化」のジャンルでは、イギリスとアメリカに関係する文化、文学、歴史、思想、政治、経済など様々なことを学ぶことができます。関連する科目として、「英米文学史(2年次)」、「英米の言語文化(2年次)」、「英米文学(3年次)」、「原典講読(3年次)」、「言語文化学演習(3年次)」、「総合研究(4年次)」が用意されています。ことばとしての英語の言語表現と機能を学び、それと同時にことばの背後にある意味をさまざまな視点から分析・研究することによって、英米の言語文化のもつ特質を学ぶことができます。

次に推薦図書について簡単に紹介します。





(1)池上彰著『そうだったのか!アメリカ』(集英社) は、よくあるアメリカの紹介本とは違い、池上氏が現代のアメリカが抱える問題を分かりやすく解説しています。9章で構成されていて、アメリカの「宗教」、「連合国家」、「帝国主義」、「銃」、「裁判」、「移民」、「差別」、「経済」、「メディア」について、豊富な資料をもとに多角的な視点から解説されています。読んだあとに読者が「そうだったのか!」と驚かされ、アメリカを十分に理解できる内容になっています。

もう一つの書物は、(2)『「イギリス社会」入門―日本人に伝えたい本当の英国』(NHK出版新書) です。著者はコリン・ジョイスという英国人ですが、大学卒業後に日本とアメリカに18年以上も滞在した経験を持っているため、自分の国の文化―例えば、お酒やパブ、コーヒー文化、歴史、イギリス英語とアメリカ英語の違いなどを、日本やアメリカの文化と比較しながら客観的に説明しています。ただ単に自国の文化の優れた点を強調している他の書物と違い、ユーモアを交えてイギリスの良いところも悪いところも均等に説明している入門書です。
(1)と(2)の書物は、本学の言語文化学科で他国の言語と文化を学ぶ方法のヒントを与えてくれる非常に役立つものです。

投稿日:2018年1月16日カテゴリー

2018年1月9日火曜日

 

スクーリング情報④【考えること・表現すること】課題図書紹介

課題図書紹介【考えること・表現すること】(担当:文景楠先生)

「考えること」と「表現すること」は、どちらもありふれたことに思えます。この文章を読んでいる皆様は、日々何かを考え、そして表現しているはずです。例えば、「お腹が空いた」と頭で考え、「ご飯が食べたい」と誰かに向かって表現することがそうです。すでにできている当たり前のことなら、大学に入ってまで学ぶ必要はあるのでしょうか?

とはいえ、「じゃあ「考えること」や「表現すること」ってなんですか?」とまじめに聞かれると、なかなかいい答えは浮かんできません。それに、「きちんと考えなさい!」や「分かるように表現しなさい!」といった小言を聞いた経験を思い出してみてください。そういうときに、いったい何をどうすればいいのかがわからず、困ったことはありませんか?だとすれば、私たちは結局、「考えること」や「表現すること」が本当は何なのか、よくわかっていないようです。



課題図書:
野矢茂樹『はじめて考えるときのように』
山田ズーニー『伝わる・揺さぶる!文章を書く』

学院で先に学んでいる大学生のお姉さんお兄さんたちも(本当のことをいうと私も)、「自分の考え」をもち、それを「他人にわかるように表現」するために苦労しています。今回の課題図書二冊を通して皆様にお願いしたいのは、「考えること」と「表現すること」という一見当たり前でありふれた事柄に対する自分の無知を認め、それに少しばかりゆっくり向き合ってみることです。ちなみに、どちらの本も高校生の皆様に十分楽しく読んでいただけるものを選びました。怖い先生が書いた本じゃないので、安心して取りかかってください。

二冊の本は、スタイルがかなり違います。共通しているのは、どちらにも「こうすれば満点!」といえるような安直な答えは用意されていないという点です。そもそも大学での学びは、正解が用意されているテストのようなものではないのです。大学の先生は、以前にも増して皆様に「君の考えは?」や「もっときちんと表現してくれませんか?」と聞いてくるでしょう。まだイメージがわかないかもしれませんが、とりあえずこの二冊を読み、「すっきりしないな。でもなんだか面白そう!」という気持ちで大学にいらしてください。

後は色々とおしゃべりしながら、一緒に「考えること」や「表現すること」とは何かを考え、表現していきましょう。

投稿日:2018年1月9日カテゴリー

2018年1月8日月曜日

 

宅地建物取引士にも合格者が

言語文化学科の白鳥千帆さん(4年)が宅地建物取引士に合格しました。耳慣れない資格かと思いますが、れっきとした国家資格の一つで、その取得はなかなか簡単ではありません。卒業論文執筆の隙を縫って、彼女はどのような準備対策をしていたのでしょうか。その体験を伺ってきました。

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宅建士とは、宅地建物取引士の略です。宅地建物取引業者である不動産会社などは、土地や建物の売買、賃貸物件のあっせんなどを行っており、宅建士はそのような会社に従事していることが多いです。不動産の取引は非常に高額であるので、顧客には正確に説明をしなければなりません。彼らの多くは不動産に関する専門知識や売買経験がほとんどないため、不当な契約を結んでしまうと思わぬ損害を被ることがあります。そのようなことがないよう、顧客が知っておくべき事項(重要事項)について説明できる資格をもつ者が宅建士なのです(たとえば、単に不動産会社の社員というだけでは、説明はできません)。

私の場合は、内定先が不動産会社だったので、内定先の会社が宅建試験に向けた勉強会を、週に1度開いてくれました。勉強会は専門の講師を呼んで、学校の授業のように行われました。宅建試験は国家試験ということもあり、私自身もかなり勉強したと思います。もちろん簡単ではありませんでしたが、教科書と問題集を何度も読み返し、試験日間際には、東北学院大学図書館所蔵の問題集も利用して勉強しました。会社が開いてくれた約半年間の勉強会と、学院大の問題集等のおかげで、無事に合格することができました。苦労はしましたが、国家試験なので、一回受かれば一生ものです。会社の先輩たちも、「学生でいるうちに勉強しておいたほうがいいよ」と仰っていたので、資格を取るならいまのうちだと思います。不動産や、建築業界だけでなく、金融業界などでも宅建士の資格が必要になる場合があるので、就職活動前に取っておくと、就職に有利になるかもしれません。さらに、学生であるうちに宅建試験に合格すると、大学の報奨制度が利用できるとも聞きました。ぜひ宅建試験にトライしてみてください。

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なお、白鳥さんの文中に触れられていた「資格取得報奨制度」は以下を指します。どうぞご参照ください。

http://www.tohoku-gakuin.ac.jp/campuslife/shikaku/bonus.html

投稿日:2018年1月8日カテゴリー

2018年1月3日水曜日

 

スクーリング情報③【ことばの習得と教育】課題図書紹介

課題図書紹介【ことばの習得と教育】(担当:渡部友子先生)

1.『外国語学習に成功する人、しない人』白井恭弘著

「何年も勉強しているのに英語が使えるようにならない」という挫折感を多くの日本人が抱えています。しかし一方で、英語を使って国際的な舞台で活躍する人もいます。成功と挫折を分ける要因は何なのでしょうか。そして、どういう学び方をすれば、英語が身につくのでしょうか。この本は、これらの問いに答えてくれます。

「これさえやれば英語が話せる」というような宣伝を見聞きすることがありますが、実は科学的根拠に基づいたものは少ないのです。外国語習得の研究者である著者は、これまでの研究で分かったことを紹介しながら、学習のコツを具体的に提示しています。「なぜ」を理解し「どう」すればいいかが分かれば、学習はしやすくなると思います。この本は、大学入学後も継続して学ぶ英語と、新たに学ぶ第二外国語の学習を支える一冊です。





 

2.『「達人」の英語学習法』竹内理著

「外国語は幼いうちに始めた方がよい」とよく言われます。実際、中学校で学び始めて最終的に高いレベルの英語力を手に入れる人が少ないことは、調査でわかっています。しかしこのことを逆に見ると、少数だが存在する、とも言えます。「達人」と呼ぶべきその少数派に、この本は注目します。彼らは一体、どのような学び方で英語をマスターしたのでしょうか。

第1~2章は、外国語習得に影響を与える様々な要因(年齢や性格など)について、研究で判明していることを紹介します。この部分は、白井氏の著書と一部内容が重なります。第3~5章は、達人たちが実際に行なった学び方の共通点を導き出し、効果的な学習方法を探り出します。そこからわかるのは、短期間で楽に英語が身につくような魔法はない、でも努力の仕方に秘訣はある、ということです。日本に生まれ、日本で普通の英語教育を受け、長期の留学経験もない人が、どうして英語の達人になれたのか、あなたも知りたくありませんか?

投稿日:2018年1月3日カテゴリー