2016年12月31日土曜日

 

スクーリング情報(4)【ことばとコミュニケーション】

【ことばとコミュニケーション】課題図書紹介     担当:小林 睦 先生

「ことばとコミュニケーション」に関する書籍として私がみなさんに推薦したのは、以下の2冊です。(1)平田オリザ『わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か』(講談社現代新書、799円)、(2)子安増生『心の理論 心を読む心の科学』(岩波科学ライブラリー、1512円)


 (1)は「青年団」という劇団を主宰する劇作家・演出家の本です。著者の平田オリザ氏が書いた台本は、中学国語の教材にもなっているので、皆さんも接したことがあるかもしれません。この本には、その彼が、色々な小学校や中学校で演劇ワークショップを行なうなかで、気づいたことや考えたことが記してあります。具体的に言えば、本書には、コミュニケーション能力を過剰なまでに求める、現代社会の風潮に対する疑問が示されています。日本のコミュニケーション教育では「わかりあう」ことに重点がおかれているが、むしろ「わかりあえない」ところから出発するコミュニケーションが大事なのではないか。もし「心からわかりあえなければコミュニケーションではない」とするなら、そこでは、心からわかりあう可能性のない人を排除する論理が働くのではないか。しかし、実際には「心からわかりあえないんだよ、すぐには」、「心からわかりあえないんだよ、初めからは」と筆者は述べます。簡単に「わかりあう」ことを前提としない。その点で、本書は、コミュニケーション能力の必要性を説くばかりの多くの書物とは異なる視点から、私たちが考えるための示唆を与えてくれる書物です。

(2)は、他人の心を理解する仕組みについて、認知科学的な観点から書かれた著作です。議論の素材となるのは、自閉症児の研究が明らかにした様々な事柄です。自閉症は発達障害の一つであり、かつて主張されたように、子供本人の努力不足や母親の育て方などが原因で生じるものではありません。今日では、自閉症は脳の中枢神経の機能障害により生じると推定されていますが、詳しい原因はまだわかっていません。自閉症の特徴は、(a)他人の気持ちを理解することが苦手である、(b)ことばの発達が遅く、身振りや表情を使うのが得意でない、(c)同じ動作を反復して行なうことを好み、新しいことをやりたがない、といったものです。こうした特徴をまとめるならば、自閉症の人は、言語的あるいは非言語的なコミュニケーションに問題がある、と言うことができます。これらの研究から明らかになってきたことは、他人の気持ちを理解するためにはどのような心の働きが必要か、ということです。コミュニケーションが苦手であるのはなぜなのか。その仕組みを明らかにすることで、本書は、コミュニケーションの意味について、新たな側面から光をあてた書物だと言えるでしょう。

投稿日:2016年12月31日カテゴリー

2016年12月26日月曜日

 

スクーリング情報(3)【ことばの習得と教育】

課題図書紹介【ことばの習得と教育】(担当:渡部友子先生)

1.『外国語学習に成功する人、しない人』白井恭弘著

「何年も勉強しているのに英語が使えるようにならない」という挫折感を多くの日本人が抱えています。しかし一方で、英語を使って国際的な舞台で活躍する人もいます。成功と挫折を分ける要因は何なのでしょうか。そして、どういう学び方をすれば、英語が身につくのでしょうか。この本は、これらの問いに答えてくれます。

「これさえやれば英語が話せる」というような宣伝を見聞きすることがありますが、実は科学的根拠に基づいたものは少ないのです。外国語習得の研究者である著者は、これまでの研究で分かったことを紹介しながら、学習のコツを具体的に提示しています。「なぜ」を理解し「どう」すればいいかが分かれば、学習はしやすくなると思います。この本は、大学入学後も継続して学ぶ英語と、新たに学ぶ第二外国語の学習を支える一冊です。


2.『「達人」の英語学習法』竹内理著

「外国語は幼いうちに始めた方がよい」とよく言われます。実際、中学校で学び始めて最終的に高いレベルの英語力を手に入れる人が少ないことは、調査でわかっています。しかしこのことを逆に見ると、少数だが存在する、とも言えます。「達人」と呼ぶべきその少数派に、この本は注目します。彼らは一体、どのような学び方で英語をマスターしたのでしょうか。

第1~2章は、外国語習得に影響を与える様々な要因(年齢や性格など)について、研究で判明していることを紹介します。この部分は、白井氏の著書と一部内容が重なります。第3~5章は、達人たちが実際に行なった学び方の共通点を導き出し、効果的な学習方法を探り出します。そこからわかるのは、短期間で楽に英語が身につくような魔法はない、でも努力の仕方に秘訣はある、ということです。日本に生まれ、日本で普通の英語教育を受け、長期の留学経験もない人が、どうして英語の達人になれたのか、あなたも知りたくありませんか?

投稿日:2016年12月26日カテゴリー

2016年12月22日木曜日

 

チームテーマ「文化のしくみと解析」の中間発表


チーム「日中韓の言語文化」に続き、本日はチーム「文化のしくみと解析」にお邪魔してきました。




先の「日中韓~」はいわば個別指導方式の回でしたが、今回の「文化は~」はご覧の通り発表会スタイルで、入口には「自由に出入りして下さって構いません」のメッセージまで付してありました。

配布のレジュメ(資料)を眺めると、「美容整形で幸せになれるか」「相手を傷つけないための嘘ならついてもよいのか?」「他者との関係の中で生まれる性自認」などのテーマが並んでいます。なかなか難しそうな内容ですけれど、指導担当教員3名の専門がそれぞれ文化人類学、倫理学、哲学ですから、当然といえば当然なのかもしれません。それでも、怯まず臆さず、4年生たちは教員と丁丁発止のやりとりを繰り広げていました。頼もしい限りです。

どうぞよい卒業論文が書けますように――

投稿日:2016年12月22日カテゴリー

 

スクーリング情報(2)【考えること・表現すること】

課題図書紹介【考えること・表現すること】(担当:信太光郎先生)

人間は自分たちを他の生き物とは「違う」存在だと感じています。それは人間に独特の感じ方です(たとえばカエルのヘビに対する「違う」という感じ方とは別ものです)。一言でいえば、人間は自分たちを「ただの生き物でない」と感じているのです。人間のこうした感じ方は、たぶん他のどんな生き物もやらない(やれない)ことを現にやっていることからくるのでしょう。そういわれるとわたしたちはすぐに(いくぶん誇らしげに)人間の優れた知性や、それを駆使して作られる精巧な人工物を思い浮かべるかもしれません。しかしそれはすこし見当違いです。人間より素早く正確に考え、人間より精巧な構築物を作る生き物は珍しくありません。生き物としての人間(ヒト)は比較的に不器用です。人間がコンピューターを用いて本能以上の正確さで環境変化に適応し、さらには機械を作ってどんな動物よりも速く走り、高く飛べるようになったのは(つまり「スーパー・アニマル」になったのは)、生き物としてのそうした劣等感をバネにした努力の結果という側面があるのです。


課題図書:野矢茂樹『はじめて考えるときのように』
     藤田令伊 『現代アート、超入門!』について

ここで発想を変えてみましょう。人間が「ただの生き物でない」ことは、まさにその生き物としての「無能力」によっているのではないでしょうか。それは単なる不器用や能力不足ではなくて、他の生き物にはない「別の能力」と結びついているように思われます。この別の能力をもつことに比べるなら、他の生き物に対する優越感などは小さなことにすぎません。人間以外の他の生き物にとってすべては「生きるため」ですが(その目的に沿う限りで彼らはそれぞれに非常に有能なのです)、人間の生来の無能力は、実はその能力が「生きるため」にもはや束縛されていないことを表しています。そしてそれは「一から考える」能力と「新しいものを作る」能力に直接につながっていきます。このことはまた、人間だけが「自由」な存在であるということを意味します。

課題とした二冊はそうした人間固有の能力を問題にしたものです。一般に前者を「哲学」と呼び、後者を「芸術」と呼びますが、大切なことは、それらは人間の「人間らしさ」の成立と密接に結びついた営みだということです。みなさんにはこの二冊を通じて、「人間らしさ」とは何であるかを少し踏み込んで考えていただけたらと思います。

投稿日:2016年12月22日カテゴリー

2016年12月20日火曜日

 

総合研究(卒論)の提出まで、3週間を切りました

2016年も残すところあと10日と1日。



これは4年生にとっても、卒論提出日がいよいよ迫ってきたことを意味します。勿論、指導を担当する教員にとっても、です。

この時期は、学内のあちらこちらで卒論指導が行われています。今日は、チーム・テーマ「日中韓の言語文化」の授業を覗いてきました。お邪魔した教室では中国班が構想発表を行っており、発表者が教員と答問を繰り返していました(なお、日本班、韓国朝鮮班は、別の曜日に卒論指導を行っている由)。

中国班は今日が最終指導で、以後は卒論提出締切日まで各自がPCに向かうことになるのだそうです。クリスマスや正月の楽しみ喜びは、もう少しだけお預けかもしれません。

投稿日:2016年12月20日カテゴリー

2016年12月12日月曜日

 

2017年度 スクーリング情報(1)

言語文化学科に合格されたみなさん、おめでとうございます。

今は大学生活への期待も高まる時期かと思います。これからの4ヶ月は、大学生活にとって重要な準備期間となります。それは勉学についても、それ以外の活動についても同じです。どうぞ一日一日を充実したものにしてください。

言語文化学科では入学前の準備教育として、「スクーリング」と呼ばれるイベントを実施しています。お手元に既に資料が届いているかと思いますが、日程・場所は以下のようになっています。

日時:2017年2月13日(月)10:30-16:30
場所:泉キャンパス2号館224教室ほか

2号館はここです↓


 このスクーリングに際しては、みなさんに
①英語の単語テスト
②セミナー(言語篇、レポート2つ)
③セミナー(文化篇、レポート2つ)
をしていただきます。②③のセミナーについては、本学科のホームページで順次アップする予定の「スクーリング情報(2)」以降をご参照ください。

①英語の単語テストは、『基本語500 No. 1』(言語文化学科英語スタッフ編)の所収単語を暗記することです。『基本語500』は
http://www.ipc.tohoku-gakuin.ac.jp/izavc/kihongoreibun/index.html
から勉強してください。

スクーリング当日に確認テストを実施します。『基本語500』第1集の内容は音声付でWEB上に公開しています。個々の例文の音声へのアクセスや、基本単語を覚えたかどうかのチェックがすぐに行えます。ページを開いたら「お気に入り」に登録して毎日勉強してださい。ブラウザはインターネットエクスプローラを使用してください。ほかのブラウザではきちんと表示されないことがあります。



WEBが利用できる環境になく学習が困難だという人は、必ず言語文化学科スタッフ(金永昊(キムヨンホ) kimyh※mail.tohoku-gakuin.ac.jp )に連絡を取ってください。印刷された教材と音声が入ったCDを郵送いたします。

【単語の意味と例文について】

単語の意味を示す日本語訳は、覚えることを優先に最小限に抑えて書いてあります。日本語の表示から、それが名詞であるのか、動詞であるのか、形容詞であるのか、副詞であるのか、それともまた別の品詞なのかを意識するようにしてください。間違えやすいと思われる場合は品詞も表示しておきました。例文中でどの品詞が使われているのかを意識するようにしてください。英語は日本語と違い、一つの単語が複数の品詞で使用されることが多くあります。使われる意味も一つではありません。皆さんもこれから、それぞれの単語について「このような使い方もあるんだ」という経験をすることになると思います。それぞれの単語を自分のものにしていく土台作りとして利用下さい。

自分で勉強の仕方を工夫して効率のいい方法を見つけていくことが大事です。4月の入学まで時間を有効に使って、有意義に過ごしてください。

【確認テストについて】

2月のスクーリング時に行う「確認テスト」は以下の要領で実施します。

・問題はA、Bの2種類。
・A:例文を基本単語の箇所だけ空欄にして表示、単語の意味と例文の和訳も表示する。
・B:例文を基本単語の箇所だけ空欄にして表示、意味・和訳は表示せず、例文の音声を2回聞く。
・A、Bともに、基本単語の先頭の文字がヒントとして表示される。
・答えとして、空欄に入る基本単語のつづりを記入する。例文によって語形が変化している(時制、三単元のs、分詞、複数形等)ことに注意する。
・Aの問題を20問、Bの問題を20問、計40問出題する。
・点数が5割に満たない場合、4月におこなわれる追試の対象になる。
・テスト返却の後、成績優秀者を表彰する。

投稿日:2016年12月12日カテゴリー